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遺留分減殺請求

1 はじめに

柀相続人が亡くなっても、遺言書があるからもう争いごとが一切ない!と思われるかもしれません。しかし、遺言書があったとしても、一定の相続人のために留保されている「遺留分(いりゅうぶん)」によって遺言書に書いてある内容と異なる結果になることがあります。遺留分は、遺言書があるから何も手元に残らないと諦めている相続人や、遺言書によって遺産を手に入れる相続人のどちらにとっても影響してくるものです。

今回は遺留分とこれを請求していく方法について学んでいきましょう。

2 遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合のことを意味します(高橋和之外「法律学小辞典」37頁(有斐閣第5版2016))。遺留分制度は、近親者の相続期待利益を保障するために定められました。遺留分制度によって被相続人の財産処分の自由を制約されることになり、たとえ遺言書により自分の取り分が全くなかったとしても、遺留分として最低限の取り分が保証され得ることになります。

遺留分の保証を受ける者は、被相続人の配偶者と直系卑属、直系尊属のみとなり、兄弟姉妹は保証を受けません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、その他の場合は2分の1となります。

3 遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)とは

被相続人の遺言書による贈与や遺贈などによって遺留分に満たない取り分しか得られない場合、遺留分が侵害されたことになるので、遺留分権利者とその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈、贈与などの減殺を請求することができます。つまり、遺留分を侵害する贈与等が有効であり、この遺贈等に対して遺留分として認められた取り分を確保するために行使する請求権のことを遺留分減殺請求権といいます。

4 遺留分額の算定

ざっくり説明しますと,

①遺留分算定の基礎となる財産

「相続開始時の財産(積極財産)+贈与-債務=遺留分算定の基礎となる財産」を算出し,

②遺留分額

「遺留分算定の基礎となる財産の額×個別的遺留分率」を導き出して遺留分額を算定します。

なお、判例(最判平成8.11.26民集50巻10号2747頁)では、さらに特別受益額を控除したものが遺留分額になると説明されています。ただ、遺留分侵害額の算定の際に特別受益を控除する方法が多いです。

5 遺留分侵害額の算定

自身の遺留分額が分かれば、次に遺留分が侵害されている額を算定します。

ここもざっくり説明しますと,

「遺留分額-純取り分額(遺留分権利者が相続によって得た財産額+特別受益額(受贈額と受遺額)-相続債務負担額)」

という計算式で算定します。

6 遺留分減殺請求の方法

遺留分減殺請求権の行使は単に相手方に対する意思表示をもってすれば足ります。必ずしも裁判を起こす必要はありません。判例(最判昭和57.3.4民集36巻3号241頁)において、「遺留分減殺請求権は形成権であって、その行使により贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受贈者又は受遺者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としているためです。

7 遺留分制度の改正

相続法改正が進んでおり、遺留分制度も改正される予定です。遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へと改正されます。遺留分減殺請求権ですと、遺留分減殺請求者に遺産の中からいらない田んぼ等の一部を渡せばよいと理解し、調停などによる解決が図りにくいことがあったことなどから、今回の改正に至りました。

遺留分侵害額請求権とは、遺留分侵害を理由とする金銭給付請求権であり、遺留分を侵害された者が相手方に有している固有の権利(債権)となります。金銭給付請求権なので、遺留分権利者が自己の固有の財産として保持し、給付された金銭が遺産(相続財産)に復帰するものではありません。

遺留分侵害額請求権を受けた受遺者または受贈者が直ちに金銭を準備できない場合、その受遺者らは裁判所に対して相当の期限を許与するよう請求することができます。この期限が経過するまで履行遅滞に陥ることはありません。

8 まとめ

遺留分減殺請求について何となくご理解いただけたでしょうか。

敢えて細かい説明を避けてざっくりさせていただいたのは,法改正もあるところですし,計算方法がかなり複雑だからです。初めて遺留分に触れる人が急に細かい説明を受けても,却って混乱してしまう恐れがあります。

その他にも遺留分に関してはいろいろな論点があり、複雑な制度となっています。遺留分侵害の算定に関しては、東京地方裁判所プラクティス委員会第三小委員会「遺留分減殺請求訴訟における遺留分算定について」(判タ1345号34頁)を参考に計算シートを利用することが多いように思います。相続法の改正が進んでおり、遺留分についても今後いろいろと勉強しなければならないことが多くなってくるでしょう。