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遺言書

1 はじめに

「遺言書」という言葉は誰もが耳にしたことがあるかもしれません。「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と言われていることが多いですが、法律用語としては「いごん」と読みます。一般的なイメージとしての遺言は、単に遺産を処理する方法を定めるものを意味すると理解されているのではないでしょうか。しかし、遺言にも種類があり形式面での要件や処理の方法も異なってきます。

今回はそのような遺言について学んでいきましょう。

 

2 遺言とは

遺言とは、一定の方式に従ってされる相手方のない一方的かつ単独の意思表示であり、遺言者の死後の法律関係を定める最終意思の表示であって、その者の死亡によって法律効果を発生するものであります(高橋和之外「法律学小辞典」15頁(有斐閣第5版2016))。ちょっと難しいかもしれませんが、要するに遺言者が亡くなった時、遺言者が一方的に自己の財産関係などを決めるものと理解すればおおよそ当たっているでしょう。

遺言は人の最終意思の表示であることから、遺言者が亡くなった後に遺言の内容を遺言者に確認することができません。そこで、遺言の内容の確定に注意を要し、ねつ造等を防止する観点から、民法において遺言の方式が厳格に定められています(要式行為)。法律が定める方式に反する遺言には効力が生じません(ただし、秘密証書遺言については民法971条)。

 

3 遺言事項

遺言書に何を書けるのかは法律で決まっており、遺言でなしうる行為を遺言事項と言います。具体的な遺言事項は以下のとおりです。

 

① 家族に関する事項

認知(民法781条2項)、未成年後見人の指定(民法839条1項)、未成年後見監督人の指定(848条)

 

② 法定相続に関する事項

推定相続人の廃除・排除の取消し(民法893条、894条2項)、相続分の指定およびその委託(民法902条)、特別受益者の相続分に関する持戻し免除事項(民法903条3項)、遺産分割方法の指定およびその委託・遺産分割の禁止(民法908条)、遺産分割における共同相続人間の担保責任に関する定め(民法914条)、遺贈の減殺に関する定め(民法1034条但書)

 

③ ②以外の財産処分に関する事項

遺贈(民法964条)、遺贈の効力に関する定め(民法988条等)

 

④ 遺言執行に関する事項

遺言執行者の指定およびその委託(民法1006条1項)、遺言執行者に関する定め(民法1016条等)

 

⑤ 遺言の撤回(民法1022条)

民法に記載されているものを列挙しました。他の法律にも遺言事項の記載があります。法律で定められた事項以外の記載については、法的な意味はありません。ただし、遺言者としては家族に思いを伝えたいことが多いと思いますので、その思いを付言条項として記載することが多いです。例えば、付言条項に「あの人は嫌いだ」、「兄弟仲良くしてね」などを記載します。

 

4 遺言書の種類

①自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と、民法第968条で規定された遺言方法です。自書、日付、氏名、押印が必要となります。

自書:筆跡が分かる方法で遺言者自身が書く必要があります。他人に筆記させたりワープロで作成したりした場合は自書に当たりません。

日付:暦上の日を特定できることが必要です。「私の70歳の誕生日」も有効となります。反対に「吉日」等だけでは暦上の日を特定できないので要件を満たしません。

氏名:遺言者を特定する必要があるので、氏名が求められます。遺言者が特定できればよいので通称や芸名でもよいです。

押印:遺言者の同一性や意思の真正性を担保するために必要となります。三文判でも指印でも要件を満たします。日本の習慣に基づくものなので、押印の習慣がない帰化外国人が作成した押印のない遺言を有効と認めた判決(最判S49.12.24民集28巻10号2152頁)があります。また、遺言書ではなくそれを入れた封筒に押印がある場合、押印の要件を満たしたという判決もあります(最判H6.6.24家月47巻3号60頁)。

②公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場にいる公証人の下、作成されるものです。作成の方式は以下のとおりです(民法969条各号)。

 

一 証人二人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 

公正証書遺言をする場合、遺言能力があるか、遺産がどのくらいあるか、どのような遺言をするのかを検討するため、いろいろな書類が必要になります。また、遺言に載せる遺産の額によって手数料も異なってきます。公証役場にて証人を用意する場合にはその費用も発生します。詳細については、公証役場や弁護士に問い合わせするのが良いでしょう。

③秘密証書遺言

遺言の存在自体は明らかにしておきながら、その内容はできる限り秘密にしておこうとする場合、秘密証書遺言が適しています。秘密証書遺言の作成の方式は以下のとおりです(民法970条1項各号)。

 

一  遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

二  遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

三  遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

四  公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

 

自筆証書遺言と異なり、遺言書本文は自書である必要はなく、ワープロによる作成も許されています。署名と押印は必要となります。秘密証書遺言の要件を欠いて無効となっても、自筆証書遺言の要件を充足していれば自筆証書遺言として効力が認められます(民法971条)。

5 相続法改正

現在、相続法の改正が進んでおります。その相続法改正により、自筆証書遺言にも変更があります。

⑴ 自書によらない財産目録の添付

自筆証書に相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自書する必要がなくなります。自書によらない財産目録を添付する方式のみを認めることになるため、1頁の遺言書の中に自書による部分と自書によらない部分とを混在していれば方式の要件を満たしたことになりません。

自書によらない目録を添付する場合、その目録のそれぞれの頁ごとに署名し、押印する必要があります。自書によらない記載が両面に及ぶ場合、その裏面にも署名捺印が必要となります。例えば、両面で3枚の目録を添付する場合、表面の1、3、5頁と裏面2、4頁に署名捺印し、白紙である5頁の裏面(6頁)にも署名捺印をする必要があります。目録の各頁に署名押印を要求すること以外には特段の要式性は求められません。そのため、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳の写しなどを添付し、それを目録として使用する方法も可能です。

⑵ 自筆証書遺言の保管制度

現在まで、自筆証書遺言は自身もしくは他人に預けて保管されていました。今回の改正により、法務大臣の指定する法務局のうち、遺言者の住所地もしくは本籍地を管轄する法務局、または、遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局に対して自筆証書遺言を保管してもらえることになります。

保管を申請できるのは、自筆証書遺言を作成した遺言者本人に限られ、遺言者本人が法務局に出頭して行わなければなりません。保管できるのは封のされていない自筆証書遺言となります。保管された自筆証書遺言につき、検認の規定は適用されないことになります。

震災の影響もあることから、保管された遺言書は画像情報化して保存されることになります。

保管された後、遺言者による遺言書の返還請求や閲覧請求についても規定され、また、遺言者以外の者の権利(保管先の法務局の名称等を証明する書面の交付請求権、閲覧請求権等)も規定されます。

 

6 まとめ

遺言について一般的なことをまとめてみました。ほかにも、急に遺言しなければならないときや、話すことができない人が公証役場で公正証書遺言を作成する場合など、複雑なものもあります。相続人のために財産を残したものの、遺産が原因で相続人間に争いごとが生じるということはよくあります。そうならないように、きちんとした遺言を残して相続人のために処理しておくことが望ましいでしょう。