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遺産分割協議書

1 はじめに

遺産分割協議書とは、要するに遺産分割の内容を書面にまとめたものです。

遺産分割協議書作成の必要性や、作成にあたっての注意点などをみていきましょう。

 

2 遺産分割とは

相続は、被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。相続人が複数いる場合も多く、その場合、相続財産(遺産)は、その共有に属します(民法898条)。相続人間においては、どの遺産を誰がどの程度譲り受けるかなどについてはそれぞれの希望があります。そんな時、相続財産の共有を暫定的に決めた上で、相続財産を各相続人に適正・妥当に分配するために行う手続きが遺産分割です。遺産分割では、①誰が(相続人の範囲)、②何を(遺産の範囲・評価)、③どのような割合で(指定・法定相続分、特別受益、寄与分)、④どのように分けるか(分割方法(現物分割、代償分割、換価分割))を決めていきます(相続事件研究会「事例に学ぶ相続事件入門」12頁(民事法研究会、初版、2015))。

被相続人が遺言によって相続財産の分配方法を指定していたとしても、相続人全員の同意があれば、遺言の内容と異なる方法で遺産分割を行うことも可能です。

 

3 遺産分割協議書の必要性

全ての相続人間で遺産分割の内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割は、全ての相続人の合意さえあれば成立しますが、不動産登記を扱う法務局や金融機関等に対して遺産分割の結果を報告しただけでは、その結果に基づいた処理をしてもらえません。金融機関等としては、間違った内容で処理をしてしまうことは避けなくてはならいので、遺産分割がしっかり行われたかを確認するために、まずは遺産分割協議書の提出を求めてきます。

また、金融機関等への処理が必要ない場合でも、相続人間で言った言わない等の無用なトラブルを避けるため、遺産分割の結果を遺産分割協議書という形で残しておくことが大切です。

 

4 遺産分割協議書の作成

  •  一般的注意事項

遺産分割協議書の作成方法については、特に法律で規定があるわけではありません。ただし、その遺産分割協議書に従って、金融機関等が預金の解約等の処理を適切に行えるような内容にしなければなりません。

また、金融機関等に提出する遺産分割協議書には、各相続人の実印による署名捺印と、併せてその実印の印鑑証明書を添付する必要があります。

 

  •  遺産目録に関する注意事項

遺産分割後のそれぞれの手続きについて、遺産目録からだけでは遺産分割の対象が不明な場合、金融機関等は遺産分割に従った処理ができない可能性があります。そのため、遺産目録の正確性は非常に重要となります。

 

ア 不動産

登記簿謄本などの記載に従って正確に記載する必要があります。

土地については、「所在」、「地番」、「地目」、「地積」、

建物については、「所在」、「家屋番号」、「種類」、「構造」、「床面積」を記載します。

未登記建物については、固定資産税評価証明書の記載に従って記載します。

借地権については、契約書の記載に従い記載します。

法務局の記載例では、以下のように記載されています。

 

不動産

所 在 ○○市○○町一丁目

地 番 23番

地 目 宅地

地 積 123・45平方メートル

 

所 在 ○○市○○町一丁目23番地

家屋番号 23番

種 類 居宅

構 造 木造かわらぶき2階建

床 面 積 1階 43・00平方メートル

2階 21・34平方メートル

 

法務局のウェブサイトにアップされている遺産分割を理由とする所有権移転登記申請書の記載例には多数の注意事項が記載されています。遺産分割をする際には、あらかじめこの記載例に書かれていることを理解する必要があります。

数次相続の場合の記載例についても載せておきます。

 

イ 預貯金

預貯金は、「金融機関名」、「種類」、「口座番号(記号・番号)」で特定します。金融機関から残高証明書を取得し、そのまま記載すれば特定できます。

一般社団法人全国銀行協会のウェブサイト上にある「遺産分割協議書の記載にかかる留意点」において、

  • 預金が遺産分割の対象とされているか不明な場合(不動産・動産としか記載されていない)
  • 遺産分割協議書に記載されていない預金がある場合
  • 預金の承継に条件が付されている場合
  • 預金残高に変動がある場合

にはご留意くださいと記載されています。④については、遺産分割協議書に預貯金の金額を具体的に記載した場合に起こり得ることですので、遺産分割協議書に預貯金の金額(残高)を記載する必要はありません。

また、口座の名義が被相続人ではないものの、実質的に被相続人の口座である場合にも注意が必要です。この場合、「名義人」も遺産分割協議書に加えて遺産として特定することになるでしょう。

 

5 まとめ

遺産分割をまとめることも大変ですが、後の諸手続きとの関係上、遺産分割の内容を遺産分割協議書に記載することも大変です。相続人がたくさんいればいるほど、それぞれの思いや希望を調整しなければなりません。相続人がたくさんいる場合には、1枚の遺産分割協議書に全員の署名捺印をもらうのは大変なので、「遺産分割協議証明書」にそれぞれ個別に署名捺印をもらう方法もあります。

遺産分割の処理が遅れればそれだけ手間がかかることになります(法務省「未来につなぐ相続登記参照」)。きちんとした遺産分割を行い、正確な遺産分割協議書を作成しましょう。