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相続コラム

寄与分とは

1 はじめに

 

 相続分は法律によって一律に定められています。共同相続人の中に、被相続人の財産の増加及び維持のために特別に貢献した人がいた場合、一律に法定相続分に従って相続財産を分割することは特別に貢献した人にとってみれば相続人間の公平に反することになります。そこで、特別に寄与した財産的価値を考慮して、特別に寄与した者に与えられる相続財産の額を調整することができます。これが寄与分制度です(民法904条の21項参照)。

 

2 寄与分とは

 

 被相続人の財産の増加維持に貢献した者に寄与分が認められる場合は、寄与分を相続開始時の財産から控除し、それを相続財産とみなして、各共同相続人の相続分を乗じて各共同相続人が取得すべき相続分を確定します。この一応の相続分に寄与分を加算した額が、この貢献した者の相続分となります。

 

3 寄与が認められる者

 

 被相続人の財産の増加・維持に寄与できるのは、共同相続人だけです(民法904条の21項参照)。相続人が相続放棄をした場合には相続人ではなくなるので、たとえ寄与分があったとしてもこれに関して何らかの権利を行使することはできません。以下、寄与が認められる者に関する注意事項を列挙します。

 

      特別の寄与をした時点では推定相続人でなかったが後に推定相続人となった場合は、相続開始時に相続人である以上、その相続人の寄与は寄与分として評価されます。

逆に、寄与をした時点では推定相続人だったが、相続開始時に相続人でない場合は、いくら被相続人の財産の形成に貢献しても寄与分は認められません。

 

      代襲相続が生じ、被代襲者が特別の寄与をした場合は、被代襲者の寄与分は考慮されます。

 

      代襲相続が生じ、代襲者が特別の寄与をした場合は、代襲原因と寄与の先後にかかわらず、寄与分が認められます。これは特別受益の場合と異なりますので注意が必要です。

 

      包括受遺を受けた場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。しかし、この者が相続人でないならば、寄与分は認められません。

 

4 民法改正による特別寄与制度

 平成30年の民法改正によって、特別寄与制度が新設されました。相続人ではないけれど相続人の親族であって、被相続人に対する療養看護その他の労務の提供により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者は、相続が開始した後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができます(改正民法10501項参照)。これを特別寄与料と言います。寄与分と特別寄与料とは、請求・考慮場面などの違いがあるので注意しましょう。

 

5 寄与の態様

 寄与として認められるのは、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付」「被相続人の療養看護」「その他の方法」です。相続人は、これらによって特別の寄与をした場合は、遺産分割において寄与分を主張することができます。(何が寄与分に当たるかについては別の回にご説明します。)

 

6 遺贈や遺留分との関係

 寄与分が大きくなればなるほど、みなし相続財産の額が減少します。寄与分は、被相続人が相続開始の時点で有していた財産の価額から遺贈の価額を超えることができませんから(民法904条の2第3項)、最終的に0になる可能性もあります(ただし遺留分減殺請求まで否定されるものではありません)。

 寄与分制度のもとでは、財産の維持及び増加に寄与した相続人には、これに相応する財産的価値を与えるべきですが、共同相続人の各自には相続財産から与えられる最低限の保障として遺留分が認められます。そのため、遺産分割の段階では、共同相続人が遺留分を有していることも、「一切の事情」(904条の22項)として考慮して寄与分の算定を行います。

 

6 まとめ

 このように、民法では、相続人間の公平のために寄与分という制度を設けています。皆さんは、遺産分割の際にこれを適切に主張する必要があります。以下の回では、寄与分について詳しくお話します。