相続コラム
地積規模の大きな宅地の評価
1.地積規模の大きな宅地の評価
相続税に関する土地の評価を行う際には、諸々の減額要因があります。その1つが、広すぎる土地に適用されるものです。土地の大きさには「ちょうどいいサイズ」というものがあり、狭すぎるものはもちろん使いにくいのですが、反対に広すぎるものも、やはり買い手が限られてしまったり、開発時に道路を敷設しなければいけなかったりといった理由で売買価格が下がる傾向にあります。相続税の評価額は、実際の売買時に影響が出る要因に対応して評価減を行う措置が取られており、こうした大きすぎる土地については、以前は広大地の評価というものがありましたが、現在は廃止となり、「地積規模の大きな宅地の評価」というものが使われるようになっています。
2.評価適用の要件
「地積規模の大きな宅地の評価」は、すべての土地に適用できるわけではなく、適用するには次の要件をすべて満たす必要があります。
① 面積が1,000㎡以上(三大都市圏は500㎡以上)ある
② 市街化区域に所在する
③ 都市計画法の工業専用地域以外の地域に所在する
④ 財産評価基本通達の大規模工業用地以外に所在する
⑤ 指定容積率が400%(東京都特別区は300%)以上の地域に所在する
⑥ 路線価地域の場合は、普通商業併用住宅地区若しくは普通住宅地区に所在する
これらの要件のうち、特に注意すべきは①の面積です。面積については土地登記簿に記載されていますが、近年に地積測量が行われていない場合や、その土地が分筆された残地であった場合、また農地や山林から宅地に転用された土地である場合には、土地登記簿上の面積と実際の面積が大きく相違しているケースがあります。そのため、土地登記簿上では1,000㎡以上となっているものの、実際には1,000㎡を下回っているということもあります。
これに気付かずに土地登記簿上の面積をもとに地積規模の大きな宅地の評価を適用して相続税の申告を行った場合、後の調査で実際の面積が1,000㎡を下回っていることを指摘されてしまい、結果として大幅な相続税の追加納税や過少申告加算税を支払う必要が生じてしまう可能性があります。
そのため、土地登記簿上の面積が適用範囲ギリギリである場合や、上述の通り土地登記簿上の面積と実際の面積が大きく相違しているケースに該当しそうな場合には、まずは簡易測量を行い、その上で必要に応じて土地家屋調査士に依頼して正確な測量を行った上で、地積規模の大きな宅地の評価を適用する方が安全と言えます。
3.地積規模の大きな宅地の減額割合
「地積規模の大きな宅地の評価」を適用した場合の減額割合ですが、これは、面積等によって変わってきますが、適用が可能な場合は最低でも20%は減額することが可能であり、面積が大きくなればなるほど、減額割合も大きくなります。
また、同じ面積であったとしても、三大都市圏に所在する土地の方が三大都市圏以外に所在する土地よりも減額割合は大きくなります。
一例としては下記のような算式で計算されます。
例)面積1,500㎡ 三大都市圏に所在
宅地の評価額×(1,500×0.90+75)÷1,500×0.8
※この場合、24%の減額がされるということになります。