相続コラム
寄与分を請求する流れ
1 はじめに
寄与分制度は、相続人間の公平の観点から、具体的相続分の算定にあたってこれを調整する制度です。相続人が被相続人の財産の形成及び維持に特別の寄与をした場合、どのような主張をして具体的相続分に反映させるのでしょうか。今回は寄与分の主張の方法についてお話します。
2 遺産分割協議
寄与分は実体法上の請求権ではないので、共同相続人は他の共同相続人に対して寄与分を請求することはできません。共同相続人はいつでも遺産分割の協議をすることができますから(民法907条1項)、共同相続人は、遺産分割協議の中で寄与分を主張することになります(民法904条の2第1項)。
特別受益の持戻しの場合、被相続人は持戻しを免除することができます(民法903条3項参照)。他方、寄与分の場合は、被相続人は、遺言の中で相続人の寄与分がないと言うことはできません。つまり、寄与分の有無と遺言は関係ありません。
3 遺産分割調停、寄与分を定める調停
遺産分割協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その遺産分割を家庭裁判所に請求することができます(民法907条2項参照)。共同相続人は、調停の手続において寄与分を主張することになります。
また、遺産分割調停とは別に、寄与分を定める調停の申立てをすることができます。遺産分割調停事件がすでに係属されていればその係属している家庭裁判所が管轄となり、係属していなければ相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か当事者が合意で定めた家庭裁判所が管轄となります。
4 遺産分割審判
遺産分割調停が不成立になった場合は、調停申立ての時に遺産分割の審判の申立てがあったとみなされます(家事事件手続法272条4項)。
ここで共同相続人は、別途、家庭裁判所に対して寄与分を定める処分の審判申立てをしなければなりません。共同相続人がこの申立てをしない場合には、家庭裁判所が職権で寄与分の処分について審判をすることができないためです。
また、寄与分を定める調停の申立てのみがなされた場合、遺産分割と併せた解決が望まれることから、遺産分割調停の申立てを裁判所から促される可能性があります。しかし、仮に寄与分を定める調停のみが係属し調停が不成立になった場合、調停事件は審判に移行するものの、遺産分割の審判申立てがなされない限り、寄与分を定める審判手続が不適法として却下されてしまいます。
審判に不服がある場合は、即時抗告をすることができます(家事事件手続法85条)。
5 寄与分と時効
時効によって寄与分を主張できなくなることはありません。遺産分割が完了しない限り、何十年前の贈与でも、寄与分を主張することができます。
6 まとめ
一度遺産分割が完了すると、原則として、やり直すことはできません。ごく例外的な場合にのみやり直しが認められます。そのため、遺産分割の場面では、寄与分の有無について慎重な判断が求められます。
寄与分以外の方法による場合も、どのような方法をとることができるかは、事案によって異なり、法的な判断が必要です。相続が開始した早い段階で専門家に相談することが望まれます。