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相続コラム

特別受益について

1 はじめに

相続があった際、例えば共同相続人の中に特別に被相続人から遺贈や多額の財産を受け取った人がいて、そのような中で相続が開始したとします。相続分は法律によって一律に定められているため、さきほどの遺贈や多額の財産を受け取ったことを無視して法定相続分に従って相続財産を分割してしまうと、相続人間の公平に反する結果になりかねません。そこで、特別に財産を受け取った者が取得する相続財産の額を調整する必要があります。これが特別受益制度(民法9031項参照)です。

 

2 特別受益とは

特別受益とは,「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」(民法903条1項)と定められている中にある「遺贈」や「贈与」を指します。被相続人から特別受益があった場合は、特別受益のうち贈与された分を相続開始時の財産に加算したもの(特別受益の持戻しと言われます。)を相続財産とみなして、各共同相続人の相続分を乗じて各共同相続人が取得すべき相続分を確定します。この一応の相続分から、相続人が受けた贈与・遺贈の価額を控除した残高が、その者の相続分となります。

特別受益の持戻しの対象になるのは「贈与」のみであって「遺贈」は含まれないことに注意が必要です。そのような意味で,特別受益の持戻しといっても「特別受益をみなし相続財産に戻す」と覚えてしまうと,贈与のみならず遺贈も含めてみなし相続財産にしてしまうという誤った解釈をしてしまわないように注意しましょう。要するに,贈与の価額を相続財産に加算して,特別受益(贈与・遺贈)を受けた相続人(受益相続分)についてその特別受益額を一応の相続分から控除して,残額をもってこの者の具体的相続分とするということです(潮見佳男『詳解相続法』198頁(弘文堂,初版,2018))。

 

3 特別受益を持ち戻さないといけない者

特別受益が問題になるのは相続人が受益した場合です(9031項参照)。相続人が、相続放棄をした場合は、相続人ではなくなるので、遺贈や生前贈与を受けた場合でも、特別受益の持戻しの対象にはなりません。ただ,以下のように気を付けなければならない場合もあります。

      相続人の配偶者・子・孫などが、遺贈や生前贈与を受けた場合は、その贈与の経緯、贈与された物の価値・性質、当該贈与によりその相続人が受けている利益等を考慮して、これが相続人に対する利益供与としても評価できる実質を備えるならば、特別受益に当たる可能性があります。

      代襲相続が生じた場合で、代襲者が遺贈や生前贈与を受けた場合は、受益をした時期によって異なります。⑴代襲原因の後に受益があった場合は特別受益に当たります。⑵代襲原因の前に受益があった場合は、それが実質的に被代襲者への遺産の前渡しと評価することのできる特段の事情があれば、特別受益に当たる可能性があります。

      包括遺贈を受けた場合、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。しかし、この者が相続人でないならば、特別受益の対象になりません。

 

4 特別受益の対象

 特別受益の対象は、「遺贈」、「婚姻若しくは養子縁組のため」の贈与、「生計の資本として」の贈与がこれに当たります。相続人は、これらの現在の価値を基準として、これらを持ち戻さなければなりません。何が特別受益に当たるかについては回を改めてご説明することにします。

 

5 受益した財産が残っていない場合

     受贈者の行為による場合

受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始時においてなお原状のままであるものとみなしでこれを定めます(民法904条参照)。

 

     受贈者の行為によらない場合

 904条の反対解釈として、贈与された財産が「受贈者の行為」によらずに滅失した場合は、受贈者は当該財産の贈与を受けなかったものとして具体的相続分を算定します。また、「受贈者の行為」によらずに価額が減少した場合は、相続開始時の価額で具体的相続分相続分を算定します。

 

6 まとめ

このように、民法では、相続人間の公平のために特別受益という制度を設けています。皆さんは、遺産分割の際に、これを適切に主張する必要があります。以下の回では、特別受益について具体的にお話します。