相続コラム
弁護士に検認を依頼するメリット
机の引き出しから遺言書が出てきた……このような場合、勝手に遺言書の封を開けてはいけません。遺言書の中身が気になる方も多いかもしれませんが、自宅で見つかった遺言書については開封前に「検認」という手続が必要です。
検認は家庭裁判所が行う手続
遺言書が見つかったときは、速やかに家庭裁判所に検認の手続を請求しなければなりません。
検認は、遺言書の存在などを確認するための手続です。相続人の立会いの下、裁判所で遺言書を開封して遺言書の状態を確認します。
なお検認の済んでいない遺言書を銀行や法務局の窓口に持っていっても、相続に必要な手続はできません。さらに遺言書を勝手に開封したり、検認をしないまま遺産を分けたりすると罰則の対象になります。
相続の手続をスムーズに進めるためにも、忘れずに検認の申立をしましょう。
遺言書の種類と検認
遺言の種類
一般的な遺言には、次の3つのタイプがあります。
〈自筆証書遺言〉
本人が手書きで作る遺言書です。紙とペンがあれば手軽に作れるというメリットがある一方、偽造のリスクがあるなどのデメリットもあります。
〈公正証書遺言〉
公正証書遺言は、公証人のサポートを受けながら作る遺言書です。作成に公証人という法律の専門家が関わることから、ほぼ確実に有効な遺言を残せます。また、公証役場で遺言書の原本が保管されることから、遺言書の偽造や紛失のおそれがほとんどありません。
〈秘密証書遺言〉
秘密証書遺言も公証人が作成に関わる遺言書です。しかし、公正証書遺言とは違い、遺言書の作成自体は遺言を残す本人が行い、公証人はその遺言書の存在を確認するだけ、といった特徴があります。
遺言書を開封すると無効になるので改ざんのリスクは少ないものの、遺言した者が自分で保管しなければならないことから、紛失するのではないかという不安は残ります。
検認が必要な遺言書
この中で検認が必要となる遺言書は、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」です。
これらの遺言書については、改ざんや紛失のリスクがあります。
そこで、民法は、こうしたリスクを減らすために、「家庭裁判所が検認をする前には遺言書を開封できない(民法105条により過料の罰則あり)」というルールを設けることにしたのです。
一方、公正証書遺言は、改ざんや偽造のおそれが少ないこと、遺言の原本が公証役場で保管されていることから、検認をする必要はありません。また法務局で保管してもらった自筆証書遺言についても検認は不要です。
検認の流れ
検認の大まかな流れについては、次のようになっています。
検認を申し立てる
必要な書類(相続人全員の戸籍謄本など)を揃え、家庭裁判所に申立てを行います。検認の申立先は亡くなった人が最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てをしたあとは、裁判所の方で検認の日程を決めてくれます。
検認
裁判官と裁判所書記官の立会いのもと、検認が行われます。封をされている遺言書は、このときに開封されます。
相続人のうち、遺言書を現在持っている人は必ず検認手続に参加しなければなりません。その他の相続人は参加しても、参加しなくてもよいです。また、相続人の代理人として弁護士も立ち会うことができます。
なお参加した相続人には裁判所の方から、遺言の筆跡や捺してあるハンコについての質問があります。もっとも、完璧に答える必要はなく、覚えている範囲で答えれば大丈夫です。
遺言書の返却
検認済みの証明をつけた遺言書が返却されます。また、検認の手続内容は書面で記録され、裁判所に保管されます。
検認の手続でできること・できないこと
検認をすると、遺言書の形状や内容などが確定します。遺言書の偽造などを防ぐためには、大切な手続です。しかし気をつけてほしいのは、家庭裁判所では遺言の有効・無効の確認までしてくれるわけではないということです。印の有無や日付、内容については一応確認してくれますが、有効か無効かの判断、遺言書の内容に問題があったときの対応まではしてくれません。
弁護士に検認を依頼するメリット
検認の手続で悩んだら、弁護士に手続を依頼するという方法もあります。弁護士に検認を依頼するメリットとしては、次のようなものがあります。
検認の手続に必要な書類の作成を任せることができる
検認の申立てには、検認申立書、亡くなった人および相続人全員の戸籍謄本などの書類を提出する必要があります。特に戸籍謄本については、居住していた自治体から取り寄せる必要があるため、場合によっては全国からこれらを取り寄せる作業だけでも大変です。
しかし弁護士がいれば、これらの書類の準備をすべて任せることができます。
遺言の中身や相続手続について質問できる
自筆証書遺言や秘密証書遺言については、書き方を間違えると無効になってしまうリスクがあります。
しかし家庭裁判所が行う検認は、あくまでも遺言書の状態を確認するための手続です。遺言書が有効か無効かまでは判断してくれません。この点、弁護士がいれば有効な遺言書かどうかについても確認してもらえます。
また遺言書の内容に不満がある場合や、遺言書に不審な点がある場合には、別途相談に乗ることも可能です。
さらに検認が終わったあとの手続についても、アドバイスが受けられます。
遺言書を見つけたら検認を忘れずに
自宅や貸し金庫で遺言書を見つけたら、検認が終わるまでは開封しないようにしましょう。もしわからないこと、手続の面で不安なことがありましたら、気軽にご相談いただければと思います。