相続コラム
相続税の延納、物納
1. 相続税の納付方法
相続税は、定められた期限(相続開始を知った時から10か月)内に申告し、金銭により一括納付しなければならないのが原則です。
しかし、納付期限までに金銭によって一括納付することが困難な場合もあるでしょう。特に、期限までに遺産分割協議が調わない場合も、ひとまず法定相続分で申告・納税したうえで、分割後に訂正を申し出ることになっていますから、最初の納付時にはまだ自分に財産が帰属しておらず金銭による相続税の納付ができない、ということもあり得ます。
このような場合には、一定の要件のもとで、年賦による分割納付が認められます。これを延納といいます。また、延納でも金銭による納付が難しい場合は、相続財産そのものによる納付が認められます。これを物納といいます。
今回は、これらの納付方法についてお話しします。
2. 延納
納付すべき相続税額が10万円を超えており、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、税務署長に対して書類を提出して、延納を申請することができます(相続税法38条1項)。
延納の期間は、原則として5年以内です。相続税額に原則年6%の利子税をつけて、分割納付することになります。
延納には限度額があります。延納はあくまで金銭で納付することが困難な場合にのみ認められる方法なので、納期限または納付すべき日にある現金などの財産から、3か月分の生活費や当面の事業運転資金を引いて残額があるのであれば、その残額は納付しなければなりません。そして、本来納付すべき税額からその納付した残額を引いた額について、延納が認められます。
また、延納の申請に当たっては、担保を提供しなければなりません。相続した財産でも相続人自身がもともと有していた財産でも構いません。また、延納税額が100万円未満で、かつ期間が3年以内である場合には、担保の提供は必要ありません。
3. 物納
延納によっても相続税を金銭で納付することが困難な場合には、相続財産そのものによって納付する、物納が認められます。税務署長に書類を提出する必要があります。
物納のためには、物納に充てることのできる財産があることが必要です。これは、相続財産でなければなりません(相続人自身がもともと有している財産ではいけません)。さらに、その中でも一定のものに限られていて、国債や地方債、不動産などを優先的に、法律で定められた順位によって、物納財産とします。
物納の場合でも、本来納付すべき期限よりも納付が遅れた場合には、利子税を追加で納付する必要があります。
4. まとめ
相続税の納付が難しい場合には、以上のような方法が認められています。延納も物納も、期限までに書類を提出して申請する必要がありますので、注意が必要です。